カピカピオムツマン -52ページ目
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男子禁制授乳室

今日は沐浴指導。
聖なる地、授乳室の入室が許可された。

参加した新人ママは8人。新人パパは僕1人。
一緒に沐浴指導を受ける模範的なパパではあるが、
場違いな空気をひしひしと感じる。

なにせここは、男子禁制授乳室。

新人ママの視線を感じるが、内心うらやましいに違いない。
  「めんどくせえよ、おめえ1人で行ってこいよ」
  「明日?仕事休めねぇよ」
  「おめぇが聞いてきて、オレに教えてくれればいいじゃん」


決して、良いパパぶってるわけじゃないよ。
いや、ホントに。


お見舞い客の戦場

新生児室の前は、大混雑。
1日2回、それぞれ2時間ぐらい、新生児室のカーテンが開き、赤ちゃんがお披露目される。

そのころ、お見舞いにきた人たちのポジション取りは熾烈だ。
そして、非常に勝手なことを言っている。
その子の親は僕ですよって感じである。
決して、けなしているわけではないのだが、火花が散っている。

『うちの孫は、となりの赤ちゃんよりも、キリッとしてるね』
 隣の赤ちゃんの父親は僕ですよ。

『○○ちゃんのあかちゃんが、この中で一番かわいいよね』
 ほほう、一番かわいいってのは、どの顔だね。

まあ、そうは言ってもうちの“オムツマン”が一番イケている。
前列の中央をキープしてたし。

カピカピオムツマン参上

はー、ふ~。はー、ふ~。はー、ふ~。はー、ふ~。



陣痛に耐えているキャンディーの横で僕ができる事は、一緒に深呼吸をするぐらい。





はー、ふ~。はー、ふ~。はー、ふ~。はー、ふ~。



はー、ふ~。はー、ふ~。はー、ふ~。はー、ふ~。



はー、ふ~。はー、ふ~。はー、ふ~。はー、ふ~。






















































「やめて寒い」



そんな僕に、キャンディは厳しいダメ出し。

『ふ~』が顔にあたってたのだ。自分の無力さを感じてむなしくなった。

『助産婦さん、後はよろしくお願いします』って感じ。




でも、なかなか出てこない。

『大丈夫ですよ、キャンディさん、いきむの上手。陣痛もすごい順調』
って、助産婦さんは言うけども。
なんか、こそこそ話してる。
そう言っといて、首をかしげないでくれ。



『キャンディさん、ホントに上手』
ホントか?


結局、上からおなかを押して、赤ちゃんを押し出すことに。
助産婦さんが全体重をかけて、おなかを押す。押すというよりも、おなかに乗るって感じ。

『もう、やめてくれ、キャンディが壊れちゃうよ』
って感じ。

そんななか、僕は、はー、ふ~。はー、ふ~。はー、ふ~。

自分の呼吸を整えた。



やっぱ、女は強い。男は無力だ。
ようやく、生まれた時は、涙が止まらなかった。


赤ちゃんが『オギャー』って泣く前に僕が泣いてた。ていうか、生まれる前から、すでに僕は泣いてた。

キャンディにはバレてないと思ってたけど、バレてた。





僕にダメ出ししたことも覚えてた。



陣痛と陣痛の間は、意外と冷静のようだ。これ、重要。



それにしても、こんなに涙を流したのは、『どうぶつ奇想天外』で、生まれながらハンディキャップを抱えた少女と愛犬アンナとのドッグレースのドキュメントを見た時以来だ。



それにしても、出産の立会いは目のやり場に困る。油断すると、無造作に置かれたレバーのような胎盤が目に入ってくるし。
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